酒屋の宅飲み

酒屋に勤めるサラリーマンが自宅で飲むお酒のレビュー

ケントクエステートワイナリー アルモノワール ロゼ

ケントクエステートワイナリー アルモノワール ロゼ
  • 生産地:神奈川県相模原市
  • 生産者:八咲生農園/株式会社HORIGO 東京ワイナリー
  • ブドウ品種:アルモノワール

高校のころ、美術部でしたが顧問の先生の話でいくつか覚えている教えで

「色ってのは本当に難しいんだぞ。これは青だな、こっちも青だな。でも違う色だ」

「世の中、分類はできても名前が無い色の方が多いと思う」

色相環で並んでいるから青緑と緑青が分かるけど、ぱっと見せられたら光の加減とかで先生もどっちがどっちかその時々で答えが変わるかもしれない」

 

改めてこのワインを見て先生の話を思い出しました。私の目にはロゼに見えません。ちょっと変わった白ワインです。しかし、白ワインは白ブドウで作るものです。アルモノワールなる品種を知らなかったので調べたところ、日本でカベルネソーヴィニヨンとツヴァイゲルトレーベを交配させて生まれた黒ブドウの品種で2015年登録との事ですから、これから国産ワインでちらほら見るブドウになりそうです。

 

生産者はあくまでロゼとの事ですが、私にはブランドノワールという黒ブドウで作る白ワインに見えます。黒ブドウも果汁は白っぽく、これに果皮を漬け込むことでお馴染みの赤ワインの色になります。漬け込む時間を短くするとロゼ(セニエ法)になります。

 

恐らくですが、あまり漬け込むと望んだとおりの優しい味にならないため、この状態を選択したものだと思います。飲んだところ未熟な感じはありません。

 

バックを白にして、明るさを落としてもこの色です。言われなければロゼとは思いません。

 

ホッケと合わせましたが可もなく不可もなくといった相性です。ロゼらしいおおらかさ、合わせやすさは感じませんが、白よりは合わせられる料理は多そうな印象です。優しいが芯のあの果実味と程よい酸です。やはり生き生きとした酸と果実味というのはこのワイナリーが求めていないか苦手なのか、あるいはこれが相模原の個性なのか。山梨ほどの歴史が無いからテロワールに合ったブドウと醸造法を模索中なのかと察します。

 

確かに相模原市と言う決して果物作りが盛んでない地域で「ここではこのブドウでこんなワインと作る!」と最初から決めるのは馬鹿げています。フランスの各地方が、地域や畑ごとに最も適したブドウを植えているのは、長い歴史と長年の研究から最適解を得ているからです。その一方で変化する環境に合わせて2021年にはボルドー地方では使用品種を黒ブドウで4種、白ブドウで2種新たに増やすことが決定されました。歴史と伝統を重んじながらも時代の変化にも対応しようとしているのです。

 

こちらも総評として価格、味わい共に悪くありません。「優しいがつまらない」というワインではありません。今後の進化を楽しめるワインです。